三枚はつた切手の行列の悪いこと、その切手がまた逆様で、切手を見ただけで已に風雲ただならぬものを感じてひどくくさつたといふ友達の話をきいて以来、私はそれまで切手が逆様であらうと行列が悪からうと全く気にしてゐなかつたのが、手紙のたびに一々気にするやうになり、さういふ気づかひの厭らしさを意識するたびに、その話をした友達を憎むこと頻りである。
私の恋文はまたこの果し状と同じでんで、あるときはキザなこと話にならず、また或時は熱に浮かされて何がなんだかてんで分らず、また或時は深謀遠慮を逞うして恋の手管をつくして居り、思ひ出してもはづかしくて顔が赧らむ状態だから、メリメとはだいぶん違ふ。
私は遺言状の第一条に書かうと思つてゐるのである。