一婦人の心を射ること万人の心を射ることに通じ、万人に読まれたいといふ小説も一婦人に読まれたいために書かれたといふ小説に比べたなら、私は恥をさらすために小説を書いてゐるほど今は汚辱に没頭してゐる。
その汚辱に毅然たるものゝ閃めきもなく、ひとたび芸術家の意識を忘れて、社会人としての意識からふりかへるなら、自分の小説ほど白日の下で読むに堪へないものはない。
その小説に比べると手紙の方は今生きながら公開されても、むしろ社会人的な俗的な意識の上では恥もてれくさゝも少いと言へる。
一婦人の心を射ること万人の心を射ることに通じ、万人に読まれたいといふ小説も一婦人に読まれたいために書かれたといふ小説に比べたなら、私は恥をさらすために小説を書いてゐるほど今は汚辱に没頭してゐる。
その汚辱に毅然たるものゝ閃めきもなく、ひとたび芸術家の意識を忘れて、社会人としての意識からふりかへるなら、自分の小説ほど白日の下で読むに堪へないものはない。
その小説に比べると手紙の方は今生きながら公開されても、むしろ社会人的な俗的な意識の上では恥もてれくさゝも少いと言へる。