権兵衛が種まく烏がほじくるといふ有名な権兵衛が実は実在の人物で、新宮であつたと思ふが、あのあたりに碑もあり、事蹟も残つてゐることなぞが書いてあつて面白かつたが、その本に、南国のたそがれ、子供達が竿をたづさへて路上へでる。
「蝙蝠ほい……」と呼びながら飛ぶ蝙蝠を竿で叩き落さうとして、その一日の落日の中をはしやぎまはるといふ、南国に育つた人にはその嫋々たる郷愁に結びついて忘れられない幼時の夢だといふことが書いてあつた。
同じ著者が越後の新発田へ旅行したことがあるらしく、南国の蝙蝠に関聯して、雪国で見た陰鬱な蝙蝠の思ひ出を語つてゐる。