情熱によつて魅惑する半面と、理知によつて絶望の冷めたさを覗かせる半面と、その二つの極めて日常的な交錯を人の生活に強ひるだけでも、すでにひとつの毒の作用があるのである。
常にその如何なる現実に対しても、千篇一律の反逆と復讐をたくらむものを、暗示してゐるからであつた。
まして抑制の向ふ側にひそめてゐる奔放な、野心的な、そして秘密と悪徳を愛すところの秘められた異様な情熱は、ちらくらと無言の炎をみせるところの休火山的な情炎を思はせ、それはもはや如何なる現実もこれを医しあたはぬところの妖しい毒血の温床を思はすのだつた。