どうしてもつと堂々と文子の美点を強調し、文子の美点に比べたなら、羂にもかからぬ老獪な狐のやうな卓一の心を発いてやらなかつたのであらうか。
それを思ふと口惜しさが身を切るほどの切なさに沸きたち溢れてしまふのだつた。
――悪党の羂にかかる文子の幼い心こそいぢらしくまた美しい。
どうしてもつと堂々と文子の美点を強調し、文子の美点に比べたなら、羂にもかからぬ老獪な狐のやうな卓一の心を発いてやらなかつたのであらうか。
それを思ふと口惜しさが身を切るほどの切なさに沸きたち溢れてしまふのだつた。
――悪党の羂にかかる文子の幼い心こそいぢらしくまた美しい。