煤けた格子に朝顔が這ひ凋んだ花をぶらさげてゐる昼下り、屋内の薄暗がりに埃りをかぶつて並んでゐる薬瓶や医療器具を想像しても不吉な感じが漂ふばかりで、溌剌たる治癒の快味や起死回生の新鮮味は微塵も浮んでこないのである。
数年前のことであるが、この村の小学校の校長の若干の縁に連る者だといふ若い医者がやつてきた。
学校をでてからまもない独身の男であつたが、見立ての下手はとにかくとして――といふのはもともと名手がこの山奥へくる筈がない。
煤けた格子に朝顔が這ひ凋んだ花をぶらさげてゐる昼下り、屋内の薄暗がりに埃りをかぶつて並んでゐる薬瓶や医療器具を想像しても不吉な感じが漂ふばかりで、溌剌たる治癒の快味や起死回生の新鮮味は微塵も浮んでこないのである。
数年前のことであるが、この村の小学校の校長の若干の縁に連る者だといふ若い医者がやつてきた。
学校をでてからまもない独身の男であつたが、見立ての下手はとにかくとして――といふのはもともと名手がこの山奥へくる筈がない。