ある日のこと下宿の主人が彼の部屋へ這入つてみると、冬のことで部屋の窓はしめきられ室内は濛々たる煙草のけむりでおまけにいきれた悪臭が鼻をつく有様だつたが、林平は寝床の中にひつくりかへつて、涎を流しながら――然しその両眼はたしかに開らかれてゐるのである。
窓の磨硝子をとほしてただ鈍い白色でしかないところのその一点を朦朧とみつめてゐるらしい。
けれどもその判断を下すまでには若干の時間を要したばかりか、ひとつの不吉な疑ひを通らなければならなかつた。
ある日のこと下宿の主人が彼の部屋へ這入つてみると、冬のことで部屋の窓はしめきられ室内は濛々たる煙草のけむりでおまけにいきれた悪臭が鼻をつく有様だつたが、林平は寝床の中にひつくりかへつて、涎を流しながら――然しその両眼はたしかに開らかれてゐるのである。
窓の磨硝子をとほしてただ鈍い白色でしかないところのその一点を朦朧とみつめてゐるらしい。
けれどもその判断を下すまでには若干の時間を要したばかりか、ひとつの不吉な疑ひを通らなければならなかつた。