青木卓一に誘はれてエスパニヤ軒の酒場へ二三度でかけたのが、いはゆる酒場と名のつく場所へ出入した彼の経験の全部であつた。
エスパニヤ軒は土地で最も高級な社交機関と言はれてゐる。
土地の上流の人々が主として出入するところであり、古来からの食堂や宴会室や倶楽部のほかに女の二三十人ゐる酒場があつたり舞踏場があつたりしても、エスパニヤ軒へ行くと言へば山の神も之を許し、人々も之を遊蕩とよばないやうな土地の習ひになつてゐた。
青木卓一に誘はれてエスパニヤ軒の酒場へ二三度でかけたのが、いはゆる酒場と名のつく場所へ出入した彼の経験の全部であつた。
エスパニヤ軒は土地で最も高級な社交機関と言はれてゐる。
土地の上流の人々が主として出入するところであり、古来からの食堂や宴会室や倶楽部のほかに女の二三十人ゐる酒場があつたり舞踏場があつたりしても、エスパニヤ軒へ行くと言へば山の神も之を許し、人々も之を遊蕩とよばないやうな土地の習ひになつてゐた。