奥手の方に姿の見えない客がゐて、これも姿の半分見えないひとりの女とまつたく言葉を無視しきつて相抱擁してゐるらしい。
室の中央にストーヴがあつて、暑からず寒からざる暖房も申分なく、肱掛椅子も見た眼がすでにずつしりと重く豪華であつた。
背中から肱に当る重厚味といひ深々と沈むスプリングの具合まで申分なく、いはば悪徳がその本来の罪悪的な陰影を半ばまで失ひ、かなり上品な夢幻的風韻にその装ひをこらしてゐると言へないこともないのである。
奥手の方に姿の見えない客がゐて、これも姿の半分見えないひとりの女とまつたく言葉を無視しきつて相抱擁してゐるらしい。
室の中央にストーヴがあつて、暑からず寒からざる暖房も申分なく、肱掛椅子も見た眼がすでにずつしりと重く豪華であつた。
背中から肱に当る重厚味といひ深々と沈むスプリングの具合まで申分なく、いはば悪徳がその本来の罪悪的な陰影を半ばまで失ひ、かなり上品な夢幻的風韻にその装ひをこらしてゐると言へないこともないのである。