もともといやがらせといふものは復讐と同じやうな盲目的な情熱に偏した行為であるのが普通だが、由子には恰も原因のない完全犯罪を企みかつ娯しむやうな冷静にして陰謀的な読みの深さとあくどい趣味は感じられても、盲目的な情熱に溺れて己れを赤裸々に投げだした愚を見出すことができないのだ。
いささかの可憐さもないのであつた。
巾着切りの技術のやうな器用な業でこつちの心理の隙間を狙つてくるのであるが、要するに巾着切りが己れの技術をひけらかしてゐる程度には情熱的であるにしても、いやがらせに殉じるやうな激しいものはないのである。