「絶望や怖れや悲哀の厚味の深さに比べたら、歓喜や幸福は、概ね刃物の上を渡つてゐるやうなものぢやないか。
概して僕達の世界では、積極的な、また肯定的な立場より、消極的な、また否定的な立場の方が強力なのだね。
本能に就いて言つてみても、我々の心を掻きむしる羞恥とか怖れのやうな否定的なはたらきの生々しい暴力に比べれば、愛情とか欲望のたぐひは、甘んじて譲歩の余地もあり、どうにでも変化順応せしめうる粘土のやうな気がするのだ」
「絶望や怖れや悲哀の厚味の深さに比べたら、歓喜や幸福は、概ね刃物の上を渡つてゐるやうなものぢやないか。
概して僕達の世界では、積極的な、また肯定的な立場より、消極的な、また否定的な立場の方が強力なのだね。
本能に就いて言つてみても、我々の心を掻きむしる羞恥とか怖れのやうな否定的なはたらきの生々しい暴力に比べれば、愛情とか欲望のたぐひは、甘んじて譲歩の余地もあり、どうにでも変化順応せしめうる粘土のやうな気がするのだ」