最後までツキアイができた悲しさに、田中の小説の中でいつも悪役に廻って散々な目にあわされているが、田中の小説は郡山に関する限り活写されてはいる、しかし、田中自身が活写されていないからダメである。
両雄相からみ相もつれるに至った大本のネチネチした来由、それはツマラヌ酒屋の支払いの百円二百円にあることで、三銭の大根を十銭だして買ってオツリが一銭足りなくて、オカミサンが八百屋に恨みを結ぶに至るというような、それと全く同じ程度にすぎない俗な事情にあることを、彼は彼自身の場合に於ては、その俗のまま書くことを全く忘れている。
ただ相手のことだけ書いているのである。