街頭にパンパンはいなくとも、課長夫人の疎開あとには戦時夫人がいたし、戦時的男女関係はザラであった。
万人には最低の生活が配給されていたが、軍人や会社上司の特権階級は、今日との物資の比例に於ては同じように最高級の酒池肉林であったことに変りはなく、監督官庁の役人は金次第で、あとは表面の帳面ヅラを合せておけば不合格品OKだ。
そのくせ新聞は一億一心、愛国の至情全土に溢れているようなことしか書かないけれども、書けないからで、もしも今日同様なんでも書ける時代なら、道義タイハイ、人心の腐敗堕落ということは、先ず戦争中に於て最大限に書かれる必要があったのである。