彼らが乞食であることを見分けうるのは、バケツやハンゴーやナベや裁縫の道具など、日用品一式を背負って歩いているためで、何も知らない旅行者が彼らを登山家に見立ててもフシギでないほどハイカラな住人もいるのである。
もと中学教師のジイサンは皆にオヤジとよばれていたが、現役の中学教師に見立てることができる程度に精気があって、また威厳があったのである。
その威厳は主として彼の鼻ヒゲと、冥想的な眼光によるのであるが、充分の栄養によって保たれているに相違ない皮膚のツヤツヤした精気がなければ、威厳の半ばも失われてしまうかも知れない。