又、犯罪を取り扱うに当って、それが人間追求の手段としてであっても、読者の興をひくために探偵趣味をそそるような展開法を用いるのも、文学本来の技巧であって、バルザックやドストエフスキーはこういう手法の名手でもあった。
谷崎、芥川、佐藤春夫なども、小型ではあるが、この技法を縦横に使いこなしている。
だいたい小説に於て「おあとは如何になりゆくか」ということ自体が探偵的なものであって、大小説家はこの技法を天分的に身につけているものであるから、探偵小説専門家よりも本質的に、探偵小説的技法の骨子を会得しているのが当然なのである。