概してこの条件を外れることの少いのは、アガサ・クリスチー女史が頭抜けており、まさに一頭地をぬく大天才である。
しかし、横溝正史も病身をおかして多作しながら、作品のキズは、常にそれほど大きなものではない。
相当ムリにツジツマを合せる苦しさはあるが、トリックやヒントの華麗さは、外国にもあまり例がなく、たとえば、「獄門島」に於て、犯人を和尚単独にすると手易く見破られやすい、そこで一人一殺ずつ三人の犯人を仕立てたところは、意外であってもムリであるが、三つの俳句による殺人法などのトリックは華麗であって、大いに珍重しうるものである。