それだのに私みたようなものを、ことさらによそから連れて来て、講演を聴こうとなされるのは、ちょうど先刻お話したお大名が目黒の秋刀魚を賞翫したようなもので、つまりは珍らしいから、一口食ってみようという料簡じゃないかと推察されるのです。
実際をいうと、私のようなものよりも、あなたがたが毎日顔を見ていらっしゃる常雇いの先生のお話の方がよほど有益でもあり、かつまた面白かろうとも思われるのです。
たとい私にしたところで、もしこの学校の教授にでもなっていたならば、単に新らしい刺戟のないというだけでも、このくらいの人数が集って私の講演をお聴きになる熱心なり好奇心なりは起るまいと考えるのですがどんなものでしょう。