夜がきた。
GHQとの約束はもうとり返しがつかないし(GHQというような一つの絶対な権力をもつものの圧力が、このとき、彼の絶望感にどれぐらい大きな圧力でのしかかったか想像を絶するであろう)彼の職場ではどのようなことが起り、クビ切りどころか、彼自身がクビを切られているかも知れず、現に首脳部の人たちが彼のクビ切りを相談しているかも知れない。
そのような幻想が起り、彼の関節から力がぬけ、ぬかるみへはまッた足をひッこぬく力も失せて、ぬかるみを出るまで這って歩かねばならないような状態がつづいたかも知れない。