戯作者などというものは、主として江戸大阪生れの人間がやるものだが、花廼屋は薩摩ッポウで、鳥羽伏見の戦争ではワラジをはいて、大刀をふり廻して、ソレ、駈けこめ、駈けこめ、と、上野寛永寺まで駈けこんできた鉄砲組の小隊長であった。
どういう因果か、この男は小説が好きだ。
おまけに、都会の風が身にしみてゾッコン好きであるから、御一新になると同僚はみんな官途について、肩で風をきる中で、この男は志を立て、さる戯作者の門に弟子入りして、大いに道を習い覚えて、小説をものしたところ、外道の世の中、見当外れの通ぶりが意外の功を奏して、バカにされされ、もてはやされてしまったのである。