しかし腹をさいたのは、着物の上からではなく、帯をとき、着物をまくって、腹をさいております。
さすればノド笛をかみきられたのが先にできた致命傷、あるいは致命傷にちかい抵抗不能の状態を与えるに足る深傷であったと分るのですが、ノド笛にかみついた以上は被害者の真ッ正面から抵抗をうけなければなりません。
即ち被害者は死にもの狂いの力で敵の毛をむしり着衣をむしり肉をむしり肉にかみつき、当然犯人に相当の傷を与えた上に手に何か握りしめているとか、あたりに何かが落ちているとかしそうなもの、しかるに何の抵抗の跡もなく、人の毛も犬の毛も、あたりに一本落ちているのを見かけることもできません。