事件は警視庁へレンラクされ、結城新十郎が登場を乞われて魔の犯人と腕くらべをするに至ったのであるが、犯人の世にも聡明な狡智によって幾重にも張りめぐらされた奇々怪々なカラクリ、実に明治最大の智能的殺人事件は、さすがの天才児新十郎もその謎をとくには血の汗のしたたる難儀を要したのである。
彼は人に語って、かほど完璧な構成を示す犯罪は外国にも類例稀な、あたかも芸術的性格をおびだ天才的な作品だ、と賞讃したほどであった。
警視庁から出張した新十郎はじめ御歴々は探偵を諸方にだしてヒサの身元を洗わせると怪しい人物が多々浮んできた。