母親も人目にたつ後家であるから再縁をすすめる人も多かったが、菊坂随一の貧乏世帯を必死にがんばり通したシッカリ者、ヒサが光りかがやくように美しくなるから、ほくそえんで、これで苦労のしがいがあった、然るべき旦那をもたせて老後を安楽に暮しましょうと、せいぜい娘に虫気のつかないように油断なく気をくばっていた。
けれども親が案ずるほど虫気がつくのは世のならい。
ここに医学部の書生で、荒巻敏司という美男子があった。
母親も人目にたつ後家であるから再縁をすすめる人も多かったが、菊坂随一の貧乏世帯を必死にがんばり通したシッカリ者、ヒサが光りかがやくように美しくなるから、ほくそえんで、これで苦労のしがいがあった、然るべき旦那をもたせて老後を安楽に暮しましょうと、せいぜい娘に虫気のつかないように油断なく気をくばっていた。
けれども親が案ずるほど虫気がつくのは世のならい。
ここに医学部の書生で、荒巻敏司という美男子があった。