犯人はヒサの両眼に一寸釘をうち、いかにも怨みの兇行らしく見せかけていますが、真に怨む者の兇行ならば、殺すことによって目的を達するわけで、ヒサがいつどこで殺されたかということは分ってもらいたくないことに相違なく、又、兇行の発覚が一日でもおそく、できることなら発覚されずにすましたいに相違ありません。
中橋家へ行李を届けるために払った大苦心を、行李を隠すために用いるのが自然にきまっています。
したがってヒサの眼に釘をうって怨みの兇行の如くに見せかけているのは、実は最もそうでないということ、そして、ヒサが殺されたことが一日も早く知られることが犯人の利益になること、これが即ち完璧の故に生じた弱点の一ツであります」