一夜キク子が自害して果てようとするのを、かねて私が怪しんでおりました為に、事前に察して取り押え、事の次第を知るに至りましたが、父は激怒逆上のあまり庭前を通りかかった甚吉をこの居間へよびこみ一刀のもとに刺し殺してしまったのです。
駈けつけて下さいました花田先生の親切なお指図により、甚吉の顔の皮をはぎ、癩病、発狂、自殺と見せて葬り、主人は生きてこの土蔵の中に今も暮していることはお見透しの通りでございます。
博司は生来虚弱のところへ、この秘密の暗さにたえがたく、その切なげな日常を見かねて、海外へ送り、彼の地で安穏に生涯を終らせることにはからいましたのです」