船員たちの一両日にわたる忍耐強い努力の結果、ついに満潮を見て自力で離礁することができたが、この悪戦苦闘の最中に、そこの海底が木曜島にも遥かにまさって白蝶貝、黒蝶貝の老貝の密集地帯であることを発見したのである。
後日に至って、スールー海が真珠貝の大産地であることは世界に知られるに至ったが、当時は全く知る人のない秘められた宝庫だ。
のみならず、船長畑中利平、通辞今村善光らの手記によれば、この秘境は今日真珠の産地たるスールー海のどの地点でもなく、ボルネオの無人の陸地に沿うたサンゴ礁の海底で、今日もその名を知られず所在を知られぬ未開の秘境であるらしい。