山ちかい辺地とても、流言のざわめき、軍靴の恐怖はたちこめている。
農民とても、安閑としてはいられない気持であるが、特に金持の豪農は掠奪の恐怖に苦しんだ。
津右衛門が死んで一ヶ月ほどたって、上野寛永寺にたてこもった幕府軍が敗走し、戦火が次第に関東から奥州へと延びる気配になったころ、父の兆久と兄の天鬼が三十五日の回向かたがた現れて、
山ちかい辺地とても、流言のざわめき、軍靴の恐怖はたちこめている。
農民とても、安閑としてはいられない気持であるが、特に金持の豪農は掠奪の恐怖に苦しんだ。
津右衛門が死んで一ヶ月ほどたって、上野寛永寺にたてこもった幕府軍が敗走し、戦火が次第に関東から奥州へと延びる気配になったころ、父の兆久と兄の天鬼が三十五日の回向かたがた現れて、