三十の年配になってもたった一部屋の城主にもなれずナマズヒゲに手を当てて小僧や女中の嘲弄に胸をさすらなければならぬ正司の煩悶は尽きるところを知らぬであろう。
さてこの借金を兄に返済する段になると、月に十円の大金を支払っても六十五年もかかる。
ソバ屋の出前持の給金は、住みこみ月額三円五十銭というから、月に五十銭か、せいぜい一円の支払い能力しかなく、実に元金の返済だけでも六百五十年を要するのである。
三十の年配になってもたった一部屋の城主にもなれずナマズヒゲに手を当てて小僧や女中の嘲弄に胸をさすらなければならぬ正司の煩悶は尽きるところを知らぬであろう。
さてこの借金を兄に返済する段になると、月に十円の大金を支払っても六十五年もかかる。
ソバ屋の出前持の給金は、住みこみ月額三円五十銭というから、月に五十銭か、せいぜい一円の支払い能力しかなく、実に元金の返済だけでも六百五十年を要するのである。