それは台所に接する壁にぶつかって割れたが、それまで幸平と同じように手伝うことを怠っていた正司は、それにハッとして立ち上ったが、にわかに台所へ歩いていって、然し皿洗いに働く常友や食器の運搬に立ち働く志道軒には目もくれず、一升徳利のところへマッシグラにすすんで、それを両手に持ち上げてラッパ飲みにしはじめた。
倉三が左近から打ちあけられた話であるが、常友の持参した八千円と志道軒の持参した一万円を予定通りの方法で予定の人に授与したのは事実で、相続者としては常友が正当な嫡流であり、ただし水野家の籍に直るまで一万円は次の相続者たる久吉に預けてその身柄を左近が預る、ということも、実際そのように左近の指定発言が行われたのであった。
一同は後を片づけてから寝床をしいて眠った。