雷雲は各自その進路が一定しているそうで、彼は東京のあらゆるカミナリの進路をしらべあげて、時として進路の変化がある場合はもちろんのこと、どこへ落ちたか、約二十年間にわたって東京のカミナリのあばれた跡が一目で分るようになっている。
かりに二十年間に同一地点に発生する雷雲が五百回あったとして、三百回以上同一進路に当った地区は赤色、百回以上がダイダイ色、五十回以上が黄色、十回以上が薄ミドリというように色分けになっていて、この地図を見ると、他の雷雲に二重、三重に見舞われる地域もあるし、まれにどのカミナリの進路にもかからない小さな谷間のようなのもあって、これをカミナリ相手の隠れ里というのであろうか。
このように完備した地図がどうして出来上るかというと、各地域に雷ギライの主のようなのが必ず住んでいるものだそうで、雷のなるたびに半分気を失いながらも必死に手帳とエンピツを握って進路を記録し、また翌日は落雷の地点をたしかめ、各地域の主と主とで記録を交換しあう。