現場に最も近い人家はオタツとカモ七の家であるが、住む人物が特別だから時々騒ぎも起るし、騒ぎがなくても菅谷も、月に一度ぐらいは見廻りに行って、二人の風変りな男女の生活はよく心得ているが、二人は山腹の痩せ地をよく耕して、苦しい生活もしていないし、陰のある生活もしていない。
オタツはカモ七が好きなのだ。
こういう世に稀れな力持ちの大女は小男で働きのないカモ七のようなバカな能ナシが好きと見えて、カモ七が十九、オタツが十七の年に両名相談の上、オタツはカモ七の親のところへ、カモ七はオタツの親のところへ二人の結婚の承諾を求めに行った。