まず、ロッテナム美人術というものが、実にただお兄上を狂人に仕立てる目的のために遥々日本へよばれてきたものでした」
聴き手の顔が狐につままれたように無表情になったが、新十郎自身の胸の思いは、捕縛しがたい犯人や悪計を単に見破ったということが無に劣る侘びしさでたまらなかった。
「ロッテナム美人術は開店と同時に日本の貴婦人の関心を最大限に集めることができたほど、恐らく多額な資金を物ともせぬ万全な宣伝と用意のもとに発足しながら、悪評を受けてのち没落に至るまでのダラシない不用意と無力さは、前者の性格からはいかにしても導くことができない性質のものでした。