シノブ夫人はロッテナム美人術へ毎日通ったそうですが、概ねこの寝室にひそかにこもり、侍女たちと三人でたった一度実演するだけの奇術のために練習を重ねていたのです。
ロッテナム美人術がつぶれるまでの一ヶ月間も練習したとすれば、ロンドンや巴里の劇場で実演している奇術師と同じぐらい完全に行う技術は楽々習得したでしょう。
こうして、お兄上が見物している眼前で行われた美人術は、肌をなめらかに顔のシワをとる美人術ではなくて、シノブ夫人がキミ子となり、キミ子がカヨ子となり、カヨ子がシノブ夫人にもどるという奇妙な変身術でありました。