久五郎は冷い夫婦生活の中に居住してからというもの、なんとなくこの小娘に情慾をそそられていたが、生れつき男の誘いを待つことだけを一生の定めとしているような不潔な色気が、さて自分が破産しておちぶれてみると、不潔で卑しいどころか、自分よりも高貴でミズミズしくて清らかで利口にすら見えるから、改めて心をひかれた。
政子などという男爵令嬢はもうどうでもいいが、この小娘すら自分の手のとどかぬ存在となったのかと考えると、自分の人生は八方フサガリの感きわまるものがある。
女房め、男爵め、周信め、妹め、と何を怒ったって始まりやしない。