自活の必要にせまられたこと、自活の途は女中奉公ぐらいしか思い当らなかったこと、女中になるなら御当家なぞへと思った程度のことからです。
御当家の若奥様が私に似たお気の毒なギセイ者のお一人だとは周信さんから承わったことがありましたのでそれが心にしみてもいましたが、どうせ奉公するなら大家にかぎるとの考えで、大家と申せば今までの行きがかりのせいで心当りの筆頭にはまず御当家を思いだしも致しましょう。
御当家がたまたま私が身をよせた伊勢屋さんのオトクイ様ときいて、益々なつかしく、御当家ならばね、とふと希望をもらしたのが案外にも本当の話になったのでした」