戦災で奴めの裏長屋が焼け消えて、華族全部が消え失せたので、奴めもにわかに斜陽族に出世したわけで、それからの奴めの羽ぶり、にわかに斜陽族ぶったキザといったら、ぼくもウンザリするときがありました。
もともとなれの果ての生活になれていますから斜陽族を利用してタダでメシを食う手に熟練していたばかりでなく、ホンモノの斜陽族に有りうべからざる限度の心得があって、何から何まで計算の上でやっていました。
ぼくとの関係で阿久津へ出入りするようになったころは斜陽族もそう物を云わない時世になっていましたから、そこは心得たもので、たまに匂わす程度にしか斜陽族ぶりません。