五郎兵衛が一切の責任を負い累の四方に及ぶを避けるために腹を切ったという、事実検事の追及も有耶無耶に結局事件は不起訴に終りましたが、五郎兵衛の切腹は実は嘘です、なるほど五郎兵衛の腹中に脇差が差込まれてはおった、けれどもこの脇差は狂乱のお玉が突刺したので、之を切腹にしたのは咄嗟の五郎兵衛の機転でした。
女中に腹を突刺されるという三面記事は醜態ですが、それにしても、丁度ハラキリが有っても良いときに背中ではなく腹を突刺された五郎兵衛は幸運でした、これは五郎兵衛の長男であり加茂家の当主たる人が目撃した事実ですから、間違いはない。
そのとき、五郎兵衛は落付いていた。