先生は明治中期の政客ですが、明治後期は企業家、大正以後は趣味家です。
別段出入りをしていたわけではなかったのですが、同郷のせいで私の名前を記憶にとどめておられ、折にふれて拙作に目を通されたこともあった由で、一般の世評よりも高く評価して下さった。
それで加茂五郎兵衛の伝記をあの男にやらせてみよう、そういうことになって、先生のお宅へ招ぜられて、貴君は目下不遇なる三文文士だけれども筆力非凡将来の大器であるから作中の人物としては加茂五郎兵衛が不足かも知れぬがマアこの際役不足を我慢して御尽力願う、などと最大級に激励していただいた。