すると夫人は男に向って、昨日は大きな丸太を割りもせず、おまけに濡れたのを差込むものだから燻って目も開けていられなかった、今日は良く乾いていますか、濡れた薪木と乾いた薪木の区別ぐらいは御存知でしょうね、と頭上から叱言を浴せますが、男は平然たるもので返答もなくキツツキの作業をつづけております。
そんなに忙しくコツコツと叩いて指を切りますよ。
どの指がなくても不自由ですのに、指はあとから生えません、そんなに忙しく叩いても切れるものですか、もっと落付いて一撃に、ホラ、木が飛んだ、お叱言はキリもなく続きますが、男は風馬牛、自らの流儀をあくまで墨守して熱闘十分間薪木を切り終ると今度はそれを抱え去って風呂の火をたきつけています。