どの指がなくても不自由ですのに、指はあとから生えません、そんなに忙しく叩いても切れるものですか、もっと落付いて一撃に、ホラ、木が飛んだ、お叱言はキリもなく続きますが、男は風馬牛、自らの流儀をあくまで墨守して熱闘十分間薪木を切り終ると今度はそれを抱え去って風呂の火をたきつけています。
之が当主の太郎丸氏でした。
当主は私用専断によって下男を数日の旅行にだした、あなたが勝手にしたことですからお風呂はあなたが焚いて下さい、こう捩じこまれて正論に抗すべき詭弁の立てようもないから、太郎丸氏は無念ながら風呂をたきつけているのです。