ところがこの周章て者は僕の声などてんで耳に這入らないらしく尚も一散に弾となり地平線の向う側へ飛び去りそうに見えたものですから、僕も亦とっさにわあっというと一本の線になってこの男の跡を追いかけるような次第になったのですが――大根の四五本ぬき棄てられてある横っちょのあたりでやっとこの周章て者の腰のところへ武者振りつくと勢あまって二人諸共深々と黒い土肌へめり込んでしまったのです。
顔の半ぺたを土にしてフウフウと息をつきながら夢からさめたもののようにポカンとしているこの周章て者に僕は又とぎれとぎれに詫を述べ、如何なる必然と偶然の力がかかる結果を招致するに至ったものであるかということを順を追うて説明いたしました。
――結局君はこの村に貸間又は貸家が存在するであろうかということを僕にききたかったんだね。