同じ草が傾いた屋根の上では頭をふり、庭も亦一面にペンペン草の波なんだ。
一体俺達の酒倉はこれでもれっきとした造り酒屋なんだけど、何分ここの亭主は自分の酒を自分一人であらかた呑みほしてしまうものだから、長い年月には母屋を呑み庭の立木を呑み(客ではない、無論亭主自身が呑んだんだ)、今では彼の寝室でありやがては棺桶であるところの破れほうけた酒倉がただ一つ残っているばかりだ。
だから君、夏がきてペンペン草が酒倉の白壁の半分を包み隠してしまうとき、俺は呆然として無から有の出た奇蹟をば信ずるに至るのだけれど――君が見かけ程詩人なら、疑うべき筋合ではないのじゃよ。