と、俺は一夜鬱積した酒の呪にたまりかねて、幾杯目かの觴を呑みほしたとたんに、憎むべき行者の楽天主義を打破しようと論戦の火蓋を切ったのだ。
――愛する行者よ、鉢顛闍梨の学説は不幸にしてイマヌエル・カント氏に先立って生れたるが故にここにたまたま不運なる誤謬を犯すに至ったものであることを、余は尊公のために歎くものじゃよ。
思うに尊公等岩窟断食の徒は人間能力の限界について厳正なる批判を下すべきことを忘却したがために、浅慮にも人間はつまり人間であることを忘れ恰も人間は何でもない如くに考え或は亦人間は何でもある如くに考えるのじゃよ。