俺はもう行者の長談義の中途から全く退屈していたので、どうにと勝手になるようになれと、酒倉の壁にもたれて天井の蜘蛛の巣を見ていたが、酔ったせえでもあるのだろうか、ぼやけた蝋燭は数限りない陰々を投げて狂おしく八方へ舞いめぐり、さらでも朦朧とした俺の視界を漠然の中へ引きずりこんでしまうのだ。
俺は木枯の響がヒュウとなって酒倉をくるくると駈けめぐるのをきいていたが――そのうちにみんな忘れて何もきこえなくなってしまった。
それからものの五分もじっとそんな風にしていたのだろうか、ふと引く様な物音に我にかえると、それは嘗て耳に馴れない笛の音で唄うように鳴りひびいてくるものだから何事であろうかと目で探ると――俺は危くうわあっ!