ああ幾度も幾度も……そんな風にして俺の神経の細い線が、一本ずつ浮き出てくるのを感ずる程呑みほしたのだが――酒は本来俺にとって何等味覚上の快感をもたらさないのだ。
むしろ概して苦痛を与える場合が多いのだし、それに酒はむしろ俺を冷静に返し、とぎ澄まされた自分の神経を一本ずつハッキリと意識させるのだけれど――それでいて漠然と俺の外皮をなで廻る温覚は俺をへべれけに酔っ払わしているのだった。
だから俺は酒に酔うのは自分ではなく何か自分をとりまく空気みたいなものが酔っちまうんだと思っているのだが――そんなことを思い当てるときは、きまって足腰もたたない程酔いしれているのだ。