と思っただけで、それから、俺の刺したかったのは此奴一人だったんだと激しい真実がふと分りかけた気がしただけで、刺す力が一時に凍ったように失われていた。
あの女の腹の前で出刃庖丁をふりかざしたまま私は化石してしまったのだ。
その時の私の恰好が小鬼の姿にそっくりだったと憎らしげに人に語る母であったが、私に言わせれば、ふりかざした出刃庖丁の前に突ったった母の姿は、様々な絵本の中でいちばん厭な妖婆の姿にまぎれもない妖怪じみたものであったと、時々思い出して悪感がしたよ。
と思っただけで、それから、俺の刺したかったのは此奴一人だったんだと激しい真実がふと分りかけた気がしただけで、刺す力が一時に凍ったように失われていた。
あの女の腹の前で出刃庖丁をふりかざしたまま私は化石してしまったのだ。
その時の私の恰好が小鬼の姿にそっくりだったと憎らしげに人に語る母であったが、私に言わせれば、ふりかざした出刃庖丁の前に突ったった母の姿は、様々な絵本の中でいちばん厭な妖婆の姿にまぎれもない妖怪じみたものであったと、時々思い出して悪感がしたよ。