いいえ辰夫は全快しているのですよなどとでも言うものなら、実に深刻に怯えきって僕をみつめ、こいつも気違いだ、と疑ぐりだすから、ヤア、それはどうもお気の毒でした、では本日は之まで、と戻ってくる。
檻の中の辰夫は家族の愛情を空想せずには生きられぬ。
僕も之を察していたので、辰夫の夢をくずしてはならぬ、と思い、用があって昨日は母に会えなかった、と毎日同じ嘘をつく。
いいえ辰夫は全快しているのですよなどとでも言うものなら、実に深刻に怯えきって僕をみつめ、こいつも気違いだ、と疑ぐりだすから、ヤア、それはどうもお気の毒でした、では本日は之まで、と戻ってくる。
檻の中の辰夫は家族の愛情を空想せずには生きられぬ。
僕も之を察していたので、辰夫の夢をくずしてはならぬ、と思い、用があって昨日は母に会えなかった、と毎日同じ嘘をつく。