檻の中の辰夫は家族の愛情を空想せずには生きられぬ。
僕も之を察していたので、辰夫の夢をくずしてはならぬ、と思い、用があって昨日は母に会えなかった、と毎日同じ嘘をつく。
之が嘘だということを辰夫もやがて気付いたが、彼自身とてこの夢をくずしては破滅だから、そう、と一言頷くだけ、強いて訊ねることはなかった。
檻の中の辰夫は家族の愛情を空想せずには生きられぬ。
僕も之を察していたので、辰夫の夢をくずしてはならぬ、と思い、用があって昨日は母に会えなかった、と毎日同じ嘘をつく。
之が嘘だということを辰夫もやがて気付いたが、彼自身とてこの夢をくずしては破滅だから、そう、と一言頷くだけ、強いて訊ねることはなかった。