けれども辰夫の身にすれば、家族の愛、これだけが唯一の夢。
僕のそぶりから家族の冷めたさをさとるにつけて、彼の心は一そう激しく母の愛を祈りはじめる。
はては、僕が例の如く昨日も用で君の家へ行けなかったと嘘をつくたびに、不器用にヘタな嘘をつきたもうな、という顔をし、君はまだ人生の深所が分らぬから母の表面の表現に瞞著されているが、母は自分を愛している、ただ四囲の情勢からその表現が出来ないだけだ、という意味のことをそれとなくほのめかそうとする。
けれども辰夫の身にすれば、家族の愛、これだけが唯一の夢。
僕のそぶりから家族の冷めたさをさとるにつけて、彼の心は一そう激しく母の愛を祈りはじめる。
はては、僕が例の如く昨日も用で君の家へ行けなかったと嘘をつくたびに、不器用にヘタな嘘をつきたもうな、という顔をし、君はまだ人生の深所が分らぬから母の表面の表現に瞞著されているが、母は自分を愛している、ただ四囲の情勢からその表現が出来ないだけだ、という意味のことをそれとなくほのめかそうとする。