一見したところ、とりとめのない支離滅裂な叫びに思われるのであるが、結局のところ、彼の宿命的な一生の間、このどたん場へまで追いつめられてきた最後の一行ばかりを断片的に言い綴っているのであるから、彼の精神史の動きを知る私には、正気のそれよりも激しい実感が分ったのである。
私が、君の「エスキス・スタンダール」はいいものであると割に簡単な気分で言ったところが、突然長島は狂暴な眼を輝やかして嘘だ嘘だと絶叫しはじめた。
そこで私が、こういう君の最も本質に属するところの仕事に就て人の言葉を相手に嘘だの本当だのと喚いてみても仕様がないであろう、それよりも莫迦者の寛大さをもって長閑な道化役者の心をもってきく方がいいらしいと言ったところが、彼は急に激しい落胆を表わして、でも俺はそれよりも弱い人間なんだと悄然と呟いた。