しかし、この戦争の惨禍を、こうすみやかに忘却の淵へ沈めこむほど万人が風流の奥儀に通達していることを、私はとうてい事前に信じることができなかったのである。
風流人士はこのすみやかな復興を民族の誇りと見るらしいが、この大いなる惨禍の代償として、最もカンタンな方法で一番手近かな昔へ戻る術と心境――実に無碍の心境を持ち合わせていたということ、そして、その術と心境と手腕を遺憾なく発揮したということは、人間の力を感じさせるよりも蟻族の本能と作業を思わせ、しかもこの蟻族はその慾念や処世の妙策智略にかけてだけは人間であった。
妙策智略にかけては三国志も劣らないが、道徳的には最低線上のものでもあった。